「・・・・・」

「さきちゃーん?」


綾野は黙ってしまった咲の目の前で手のひらをひらひらと振ってみせる。


「ごめんなさい、なんかグチみたいになっちゃって・・・・」


急に我に返ったようにつぶやく咲に、綾乃は片眉を上げたけれど、

すぐに笑顔に戻る。


「うん、いいのいいの。咲ちゃんの話面白いよ」

「ええー、面白い事なんて・・・」


「要するに咲ちゃんは、その白河くんて子が好きなんだ」


思いもよらない綾野の言葉。

咲が顔を上げると、綾野はにこにこと楽しそうに咲を見ている。


「まあ、生徒だし・・・お気に入りとか?そういう言い方でもいいけど」

「言い方って・・どんな言い方でも別にそんなんじゃないです」

「そう?」

「そうです」

「ふうん」

「・・・・なんですか?」

「ううん」


にこにことつかみ所が無いのは昔からだ。

綾野の視線を逸らすように、咲は手元のサングリアを飲み干した。