教室に着いたのは講義が始まる5分前だった。

「おっはよー!」

「おはよー今日早いね」

「もう遅刻できないからさー」

そう言って笑うのはヒカリ。

彼女とは大学に入ってすぐに仲良くなった。
洋服の趣味も食べ物の趣味も合う。


「ミヤまだ来てないのー?」

「うん、ラインしたら間に合うって言ってたんだけど…」

1限の開始時間になるのと同時に入って来たのは先生だった。

「席つけ〜出席とるよ〜」


子ども教育について学ぶこの大学は、
大学と言ってもこじんまりとした学校だ。

教授も学生もお互いの顔を把握しているし大講義室なんてものはない。

人数が少ないため出席確認も点呼でとることが多い。

高校までの仕組みとさほど変わらないのだ。

教授が順番に名前を読み上げ始めた時に教室のドアが開いた。


「すみません遅れました!」

「遅い〜お前ギリギリだから今回は見逃すけど気をつけろよ。夏休みまでまだ長いんだから今から遅刻してたら響くぞ。」

「はい」

はにかんで返事をすると教室を見回す。

「ミヤ!こっち!」

ヒカリが小声で呼ぶともう1度はにかんでこちらへ向かってくる。