ああ、苦しい。

苦しくて仕方がない。

にじんだ涙で視界はあいまいになる。枕に顔を押し付けた。


全部、全部、投げ捨ててしまいたいのに。


投げ捨てることができないのは、翔太のことが好きだからだ。



次の日の朝、いつもと同じようにあたしたちはラトセーヌの森へと向かった。

けれどあたしと翔太は一言も言葉を交わさなかった。目も合わない。

口喧嘩はときどきするけれど、次の日になっても話さないというのは初めてのことかもしれない。

晴人さんはいまだにあの機械のことはわからない様子だった。あと少し時間がほしいとも言われた。

「すみません…」

謝る晴人さんに、あたしは微笑んだ。

「大丈夫です。でも、うちに持ち帰って調べても良いでしょうか?」

「うちに…ということは、"ガーネット"にということですか?」

あたしは頷いて「"ガーネット"なら、いえ、外部の魔法使いだからこそ分かることもあるかもしれません」と付け加える。

決して晴人さんの手に負えないから、というわけではない。

ただ、行き詰まってしまった今の現状をどうにかするには今のままではいけない。

新しい考えを、視点を、指摘を受けないと、きっと変わらないから。

いつまでも受け身のままではきっとダメなんだ。

そう伝えると、晴人さんは目を細めて「その通りですね」と微笑んだ。