「翔太が怒ってるからでしょ!何も言わないからでしょ!」


想いを言葉にしていくと、気づかないうちに心の中にとどめていた気持ちがどんどん湧き出てくる。


「あんなに、姫には笑うのに…」

「は?普通のことだろ、何言ってんだ?」


翔太はキョトンとして本当に何を言っているのか分からないと言う顔をした。

その顔にむかついてあたしは「もういい!」と言ってその場を後にした。

走りながら翔太のもとを去るが、後ろからは「おい、由良!」とあたしを引き留めようとする声が聞こえてくる。

けど、気に留めなかった。

足も止めなかった。


あたしは、翔太の傍にいない方がいいかもしれない。

翔太が笑わないのは、あたしの傍にいるのが楽しくないからだろう。

姫に笑うのは、姫に笑ってほしいからだろう。

それは、翔太が姫のことが好きということだろうか。


電気も付いていない自分の部屋に飛び込むと、胸元のペンダントを取り出して握りしめた。


忙しいあたしと翔太はなかなか会う時間を取ることさえもできない。

だからこのペンダントがあれば独りじゃないと、そばに翔太がいてくれるような気がして心強かった。


けど今は、このペンダントが胸元にいることさえも嫌だと思ってしまう。


取ってしまおうかと思ってペンダントを引っ張るけれど、引き千切ることはできなかった。