「すげえ…」

炎の檻に閉じ込められたチンロンを見つめながら、いつの間にか傍に来ていた翔太が呟いた。


「"ガーネット"をなめないでよね」

あたしが勝ち誇ったようにそう言うと、翔太はあたしの両頬をその手で包んでぐるぐると回した。


「けどチンロンを閉じ込めただけでなんの攻撃も与えられてねえじゃねえか。まだ仕事は終わってねえだろうが、なに終わったような顔をしてんだ」


翔太が苛立ったように言うが、それはあたしにも分かっていたこと。

「分かってるよ」と翔太の手を離して再びチンロンに杖を掲げる。


あたしの魔法はこれだけで終わらない。



「チンロン、ごめんね」


荒れ狂うチンロンにあたしは謝ると辺りにたくさんの炎の玉を出現させた。


「あなたに正気に戻ってほしいだけなの」


あたしの願いはそれだけだ。なんとかチンロンを正気に戻して、もう一度それまでと同じように封印したいだけ。

攻撃を与えたいわけでもないし、死なせたいわけでもない。


魔物退治屋として働くあたしの願いはいつまでたっても矛盾している。


「"ファイヤー・ボール"!」


あたしの声と共にたくさんの火の玉はチンロンに向かって飛んでいく。

火の玉はどんどんその大きさを増していって、そして檻の隙間をくぐるころにはとても大きな火の塊になっていった。