「そうだ、チンロンは植物を司る聖獣だよ!」


すると翔太ははっと顔をあげ「だからか」と言った。


「だからチンロンの攻撃は植物が多いのか」

「そうなると、チンロンに効果的な攻撃は炎系統だね」

「お前の得意分野ってわけか」


その言葉にあたしはにっこり微笑んで「見ていてね」と言った。


「チーリンのときは翔太にいいところ見せられて悔しかったんだよ。今回は譲ってよね」

「どこで対抗意識燃やしてんだよお前」

「うるさいな、これだから"サファイア"は!」

「ここで魔物退治屋意識を出してくるな!今は仕事仲間だろうが!」


あたしは空を見つめながら「翔太が得意なのは氷系統の魔法で、炎系統の魔法は得意なわけじゃないでしょ」と言って翔太から離れる。


「炎系統はあたしがいちばん好きな魔法なんだよ。だから見てて」


あたしが見据えていたのは、荒れ狂うチンロン。

あたし達を地上に引きずり下ろしたチンロンは三角目を真っ赤に染めながらあたし達の方へと向かってきた。

確かに恐怖も感じるけれど、最初ほどの恐怖はない。

今のあたし達には対抗手段がある。チンロンの弱点を知ったのだ。


チンロンがあたし達の方に向かってくるのを見つめながら、あたしは集中した。

空を飛ぶチンロンが地上に向かってくるというのはそう何度もあることじゃない。

つまり、攻撃を与えられるチャンスは多くないってことだ。