金属が激しくぶつかり合うような叫び声をあげるチンロンは、その美しい青色の長い体をくねらせて空を泳ぐ。

今にも噛みつきそうな大きな口を開けて鋭い牙を見せつける。特徴的な長い下は赤黒い色をしていた。

噛みつかれたらひとたまりもない。


「とりあえずチンロンを姫から遠ざけないと!」


あたしの言葉に翔太は頷いて、あたし達は王都とは反対側の更に東、ラティスタ遺跡の方へと全速力で飛んでいく。

その三角に吊り上がった目であたし達を見つめていたチンロンは完全にあたし達に狙いを定めたようで追いかけてくる。

そして金切り声を上げて、先が尖って刃物のようになった葉っぱを飛ばしてきた。

それをなんとか避けながら、あたしは翔太に言う。


「引きつけるのはなんとかなったみたいだね」

「ああ。けど、この先はどうする?」

「魔石を使うにしても、チンロンがあの状態じゃ使うに使えないし…」


ちらりと後ろを見ると、チンロンは狂ったように叫び声をあげる。

こんなにも混乱した状態では封印することはできない。

チンロンを封印するには、チンロンの混乱を収めるか、抵抗力を奪う__つまり、打撃を与えなければならない。


「チンロンって何か弱点ないの?」

「さあ」

翔太は即答した。涼しい顔で、いっそ清々しい。

「さあって、"サファイア"の当主でしょ?なんで知らないの!?」