翌日。

こってり優希さんに絞られた私は、憂鬱な思いで学校に登校していました。
結局お説教が終わったのは午後三時過ぎ。朝のHLにも出ずに帰ってきていたのに、意味がなくなっていた。

そしてその後私は部活動の先輩'sに某SNSでさらに怒られたわけだ。
今更ながら私が入っている部活は演劇部。

中学時代は恋や愛などの感情が分からなかったこともあったが、今ではそんなこともなくなって。元々才能もあったのだろうか、先輩たちに誘われ演劇部という部活に落ち着いたわけだ。

"お……に………よ"

一瞬頭の片隅をよぎる声。たまにあるのだ。昔のことを思い出そうとすると部分的に聞こえる声。分からない。知らない声なのだ。
私は、何を……

「おっはよ~ん♡」

いきなり背後から大きな衝撃が伝わる。その衝撃を加えた本人は笑顔でそのまま私に抱きつき頬をスリスリと背中に這わせる。

「…ひ・と・み?
痛いわ!」

私の親友こと笹木 仁美がそこにはいた。
癖っ毛の跳ねた髪が私の首を擽っている。
いや、それでも仁美にそんな気はないのだろうが、私にとっては擽ったいのである。

「私の愛華~♪」

とまあ、こんな仁美を剥がすのに時間が掛かってしまうのだが、仁美のお陰で最近は告白自体少なくなっていた。
まあ、一部では私がそっち系だとかいう噂がたってしまっていたり、それを聞き付けた女子に告白されるという自体も発生したのであるが。

こんな彼女でも恩を返しても返しきれることのない私の大切な親友なのだ。

「そういえば、昨日の話の続きなんだけどね!」

「好きな人は言わないわ」

「それも聞きたいんだけど。ほら、サッカー部所属の人の話!三組の!」

仁美は、私の腕に恋人がするように抱きつき話を始める。

「そんな話、したっけ?」

「ええ!?したよ!
あれ?サッカー部所属って言ったっけ?」

私の質問に、困惑する仁美。
三組…

「まあ、いいや!
同学年の宮本 勇斗くん」

勇斗?何処かで…

「最近のことなんだけどね?
サッカー部のエースだったのに、なんだか女の子を常に周りに侍らせて学校サボってるんだって!」

「ああ!!
宮本、宮本 勇斗ぉ!!」

何処かで聞いたことのある名前だった。というか、昨日聞いた。
確かに女子を侍らせて学校サボっていた。
だが、本当にそれだけのことなのだろうか、彼の…その女ったらしの顔とは思えないほど哀愁帯びた顔は……
って何で私宮本 勇斗のことなんか……

だが、このとき私は解決したはずの胸の突っ掛かりに悩まされることになるなんて、気づかなかったのだ。