家ノ前に着くとそっと家の鍵を開ける。優希さんは、まだ大学の講義中だと思うし、誰もいないはずなのだが、確認をするくらいは怠る必要のないものである。

以前、学校が嫌い過ぎたとき今日のように朝会も出ることなく帰ったことがあった。
そのときは不運だったことに、優希さんの選択している科の教授が謎のウイルス感染をし、休みになったということで、早く帰ってきていた。帰ってきていたのはいいのだ。私にとっても優希さんと一緒にいられることはとても嬉しいし、良いことだとも思う。
だが、それだけで許される話ではなかったというのだ。

優希さんに怒られた。義務教育じゃないからこそ、きちんとした出席日数は必要なものだと。
鉄槌が下された。

そして説教がこれまた長かった。4時間くらい正座をさせられ、延々と怒られるのだ。最終的には私が泣き出してしまうという自体も発生した。

それからは、きちんと学校にも通ったし、怒られないようにもした。

そんな経験からの警戒なのだ。例え、優希さんが帰ってきていたとしても、足音をたてずに部屋まで行ければ、私の勝ちだ。ならば…

"やるしかない!!"

…ガチャッ
丁度私が玄関から足をフローリングの床に下ろしたときだった。その音は私の警戒を、努力を無きものとし、そして地獄へと連れ行く音だった。


「愛華…ちゃん?」

笑っていた。
クリーム色のふわふわとした髪を外からの風で靡かせ、扉を閉める風でも靡かせ、優しい水色の瞳を薄くさせ…

         カレ
私の仁愛なる優希さんというなの鬼はそこにいた。