私には親と呼べるものがいない。
とある雨の日のことだった。
留守番を任された小さな私は、けたたましくなる自宅の電話をとった。
涙ぐむような声。
理解が出来なかった。何故、この人は泣いているのだろうか?何故、この人は"家の電話番号"を知っているのだろうか。
翌日も雨だった。
皆黒い服を身にまとって、遠回しに私を見るのだ。お母さんは、いつ帰ってくるの?お父さんは?そう聞いても誰も顔を背けるだけでなにも言わなかった。
箱の中に横たわるお母さんとお父さん。
怪我をしていて、とてもいたそうだ。何故こんなことになっているのだろうか…
不思議だった。
それからまもなく、私は小学校四年生となった。両親はいなかった。親戚は私のことを引き取ろうとはしなかった。
だが、一人だけ私に手を差し伸べる人がいたのだ。それが、彼…雪森 優希という男だった。当時彼は中学一年生だった。
それなのに、私を引き取り、育ててくれた。
私の世界は、その時から彼だけだった。