「悪い悪い。」

笑ってるし、絶対悪いと思ってないでしょ。


深田くんはそのまま私の方に来て、イスに座った。

「大丈夫か?」

優しくて、大きな手で頭を撫でてくれた。

「うん。今はだいぶマシだよ。」

「そっか。」

ずっと会いたかった。


なんて言えない。

「ありがとう。来てくれて。」
「みんな、早く来ないかなって待ってるよ。」

「みんな?」

「うん。俺も入ってるし。」

ほらね、そういうことさらっと言う。ずるい人。


「どうした?」

「ずるい。」

「何がずるいんだよ。」

「ずるい。」

自分のしてること、無自覚過ぎるよ。


その優しさは悪魔だ。


「ケータイ使える?」

「うん。大丈夫だけど。」