「ありがとうございました!」


久しぶりにホルンが吹けて満足した。

教室から出て、るんるん気分で部室に
戻っていると、桃子と会った。


「桃子ー!今終わり?」


「あ、美音!お疲れ!どうだった?」


「全然吹けなかった....けど楽しかった

桃子は?」

笑顔で答える私とは逆で、

「....私は....」


桃子はそう言って、俯いた。


「どうしたの?」


「...他にトランペットの子がいてね。
その子たちが凄い強いところからきた
子だから、凄く上手くて」


「そうなんだ...」


「....でも、だからと言って引き下がる
わけにはいかないし!」


「うん、頑張って!」

桃子が前向きな子でよかった。
一緒に頑張っていく子がいてよかった


そう思ったのはいいが、そこで会話が
途切れてしまった。

話題提供が苦手な私はすぐに話題を考
えた。


「....あ、そうだ。
桃子って、何が好き?
好きなもの?って何?」


「好きなもの...?」

具体的なものが思い浮かばなくて、う
ーん と考えている様子を見て、少し可
笑しくて私は笑ってしまった。


「うん。好きな漫画とかある?」


「んー....大体の少年漫画は好き。少女
漫画も好きだけど」


「わあ!私もどっちも好き!!!!」

興奮してしまって、大きな声を出して
しまい、桃子は一瞬驚いた。

が、すぐに微笑んだ。

「よかったー、同じ部活にこういう子
ほしかったんだよね~」


「私も。高校でこういう子って居ない
のかと思ってた」


私たちは顔を見合せ、ふふっと笑い、
話を続けた。