「では、これでHRを...」



放課後になった。



ざわざわしている教室から少しづつ人
が出て行っている。
もうみんな友達もできて、「ばいばー
い」なんて手を振っている。


私は教室で親を待っていた。
一人では何もすることがなく、暇だっ
た。


スタートダッシュ、遅れちゃったな...
このまま友達できなかったらどうしよ



そんな言葉が頭の中をよぎった。

あ、でも部活で友達作れるかな。

部活見学は入学から一週間後と決まっ
てるから、まだできない。



「(早く部活したいなぁ...)」


私は部活を、吹奏楽をするためにこの
高校に来た。

ここの高校は、県内の強豪校の1つで
何度か全国に行っている。


中学2年の時までは、 この高校に行く
つもりはなかった。

吹奏楽をそこまでやりたいとは思わな
かったし、第一、私のいた中学は、み
んなやる気がなかったし、県を突破し
たことなんて、ここ何十年もなかった



毎年、銀賞。


それでみんな満足していた。


でも。私が 3年になって、顧問が代わ
った。クラリネット奏者で、なかなか若い。

そして、私はその人から、音楽の楽し
さを学んだ。

あんなにつまらなかった合奏も楽しく
なり、練習も前の2倍ぐらいした。



そして、初めて知った、悔しさ。




『プログラム○番、光陽中学校...』




あんな結果出しちゃったら、吹奏楽続
けるしかないでしょ。




「美音ー!」



「...!優香!」



大きな声がしたので、その方向に振り
返ってみるとドアから顔を出している
女の子がいた。

優香だ。

優香は同中の友達。クラスは離れてし
まったけど、一緒に吹奏楽をしてた仲
間。


「部活、早くやりたいよね」


私はドアの近くによっていった。


「ねー」


優香も部活をしにこの高校に来た感じ
だ。私と同じ、音楽の楽しさを知って
しまった子。


「友達できたー?」


優香の口から出てきた言葉が胸に刺さ
る。


「....それ、聞いちゃう?」


「優香はできたけど?めっちゃ可愛い
子!あ、音楽部希望の子もクラスにい
たんだよ!」


「ドヤ顔やめて。優香コミュ力高過ぎ
ですよー」


「まあ、部活で友達とか出来そうだし
。いくら美音でも大丈夫かな」


そう言いながら、優香は私の背中をバ
シっと叩いてきたので私は苦笑した。



「あー。今年の課題曲、どれになるか
なー」


優香が突然話題を変えてきた。
そういうのはよくある。

話題は...やっぱり音楽。



「2番か3番っぽくない?私は 3番の方
が好きだけど」


「優香も3番のが好きー ...あ、お母さ
んきたから先に帰るね~ばいばーい!



「え、あ、うん。ばいばい」


なんて自由な子。

凄くマイペースだけど、テンションが
高くて五月蝿くて...

あれ?優香とどうしてこんなに仲いい
んだろ。

家は近所だしよく遊んでたけど私と全
く趣味合わないし...

「(不思議...)」

やっぱり音楽で繋がってるからなのか
な。