「赤ずきんちゃん!」
「どうしたの?」
「見て! 綺麗なお花いっぱいあるよ!」
狼さんに言われて赤ずきんちゃんはキョロキョロと辺りを見渡しました。
「本当ね」
「これをおばあさんに渡したら、きっと喜ぶよ!」
「……、少し貰っていこうかしら」
狼さんの意図に気付いた赤ずきんちゃんは笑顔でそう口にしました。
「うん、それがいいよ! 俺あっちの方探してくるね!」
狼さんはくるりと赤ずきんちゃんに背を向けて走って行ってしまいました。
ひとりになった赤ずきんちゃんはクスクスと声を漏らし、恍惚とした表情を浮かべます。
「これで私を騙せるとでも思ってるのかしら。分かりやすいわね」
(…あぁ、早く狼さんのところに行って私のモノにしてしまいたいわ)
「けれど時間稼ぎ、よね。……仕方ないわ、お花を採ってから行きましょうか」
溢れる笑みを隠しもせず、赤ずきんちゃんは其処らにある色とりどりのお花を集めはじめました。