(そして狼さんの標的は…、私ひとりになったわ)


ドキドキと高鳴る胸の鼓動を手提げ袋を持っていない方の手でおさえ、狼さんの言葉を待つ赤ずきんちゃん。


「……おばあさんの家は何処にあるの?」

「森の奥深くの大きな木が三本あるところよ。生垣がお家の周りにあるからそれが目印になるの」


狼さんに気付かれないように口元を歪めた赤ずきんちゃんは、さらりと答えます。


狼さんは考えました。

おばあさんは病気で弱っているから食べるのはやめよう。


(赤ずきんちゃん可哀想だけど、お腹すいてるし……)


食べるなら柔らかそうな赤ずきんちゃんにしよう。


だけどなんだか


(嫌な予感がするんだけど…、気のせい、だよね…?)


その予感が当たるとも知らない狼さんは後々自分の判断を酷く後悔しますが、今の狼さんはそれどころではありません。

赤ずきんちゃんと一緒に並んで歩きながら、どうやって時間を稼ぐか頭をフル回転させています。

ふと目に入ったのは色とりどりの花たち。狼さんは何かを閃いたようにパァッと顔を輝かせました。