おばあさんの家は村から離れた森の中にあるので、赤ずきんちゃんは森の中に躊躇いなく入ります。

歩いていると、ひょっこりと狼さんが現れました。

赤ずきんちゃんは狼がどれだけ悪い獣であるか知っていましたが、何も知らないふりをしました。


何故なら


(この子…、ヘタレね)


強そうな見た目と態度とは裏腹に、瞳はどこかびくびくしていると見抜いたからです。

赤ずきんちゃんはスッと目を細めました。


(……可愛いわ)


獲物を見つけたようなドキドキとした気持ちは押し隠して、狼さんに声をかけます。


「こんにちは、狼さん」


話しかけるとびくり、と震えましたがそれも一瞬で狼さんはこんにちは、となめられないようにとでも思っているのか強気な態度で返しました。

それを見て思わずぺろりと唇を舐める赤ずきんちゃん。

狼さんはまたびくっ、としましたが赤ずきんちゃんが安心させるようにふわりと笑ったので身体の力を抜きました。


「こ、こんな朝早くから何処に行くの?」

「おばあさんのところよ」

「……………おばあさん?」


目がきらりと光った狼さんを見逃さずに、しかし表情は笑顔を保ったまま頷く。


「そう。今おばあさんね、病気で弱ってるの。だからお見舞いに行くのよ」

「そうなんだ…。早く良くなるといいね」

「ええ」


狼さんは本当におばあさんを心配している様子。


(優しい子ね…、本当)


でもこれでこの子はおばあさんを襲うことはない、と赤ずきんちゃんは思います。