昔々あるところに、小さくて可愛らしい顔立ちの少女がおりました。

その少女はおばあさんから貰った赤いずきんをいつも被っていたので、いつしか赤ずきんちゃんと呼ばれるようになりました。


「赤ずきんちゃん、ちょっといらっしゃい」

「なぁに?お母さん」


不思議そうな顔でお母さんに近寄る赤ずきんちゃんに、お母さんは手提げ袋を渡しました。


「これは?」

「お菓子と葡萄酒よ。おばあさんに届けてほしいの。今病気で弱っているけれど、これを渡せばきっと元気になるわ」

「うん、分かった」


赤ずきんちゃんはおばあさんのためなら、と大きく頷き手提げ袋をぎゅっと握りました。


「いい?知らない道を通っては駄目よ。それから急いで走っても駄目よ。転んだりしたらビンが割れてしまうから」

「うん、それは大丈夫よ」

「もし本当に危なくなったら…」


お母さんの言葉の意味を瞬時に理解した赤ずきんちゃんは、ポケットから黒い物体を取り出し、くるくると指先で回します。


「これでどかんと一発かますわ」


銃口を天井に向け、にこりと愛らしい微笑みを浮かべながらそう言いました。

それを聞いたお母さんは安心したように笑い、
赤ずきんちゃんはいってらっしゃいというお母さんの言葉を背に家を後にしました。