学年一のモテ男、逢沢祐と付き合って一ヶ月がたった。
「……そういえばさ、昨日で付き合って一ヶ月だよね」
「え、そうなの?ん?それ今日じゃね?いや、明後日?」
「…………」
こいつは私のことなんて何とも思ってないみたいだ。
一ヶ月前に告白、らしきものをされて半ば無理矢理恋人になることを決められたが…次の日、私は正式に彼の恋人になることを承諾した。
今まで誰かと付き合ったこともなかったし、めんどくさい呼び出しも減るならいいかなーなんて軽く思った。
「…次の授業は?」
なんとなく沈黙になるのが嫌で適当に話題をふる。
「体育だけど」
卵焼きを片手に逢沢は一言答えた。
今はお昼休み。
皆に私達が恋人であることを知らせるために、最初は逢沢の教室に私が行って二人で食べていたのだが
「体育って何してんの」
「テニス」
今は場所を変えて裏庭で食べている。
一緒にお昼ご飯を食べた初日から、私達が付き合っていることが学年全体に伝わっていたからだ。
情報って怖い。
「逢沢って、テニスできんの」
「普通」
それにしても……
会話広がんねー。
なんていうか、盛り上がんないよね。
付き合って一ヶ月なのにもう倦怠期のカップルみたいな感じじゃん。
「てゆーかさ、実際に私と付き合って効果はあった?」
「効果?あったよ。あいつに言ったら諦めてくれるって」
「ふーん、それはそれは。あのね、聞いて。私のほうは…全然減らないんですけど‼」
逢沢と付き合ったこの一ヶ月、彼氏がいると言っているにも関わらず、普通に告白してくるんだけど‼
「それは…御愁傷様です」
「うそ!?まさかの他人事!?」
「大丈夫、あんたに効果は出てなくても俺には出てるから」
「つまり自分が良ければそれでいいって言いたいの?」
「そのとお…」
「いでででででで」
私は逢沢のほっぺを思いっきり引っ張った。
ほんと、恋人らしくない。
「まあ、あんたのおかげで俺は助かってる。あんたは人助けというボランティアを行ってると思えばいいんだ」
あんたが助かることが、私には何のメリットにもならないんだけどね。
好きな男子じゃないから付き合ってもドキドキしないのかな。
何かをしてあげたいとも特に思わないし。
クラスが違うからお昼と帰りしか一緒にいないし。
私、このままでいいのかな。