「あんたに一つ提案がある」
「はい?」
放課後、知らない男に呼び出された。
友達からの伝言だった。
「奈々ちゃん。今ね、ある人から伝言を預かったんだけど…」
昼休みに顔を少し赤くしたクラスの女子が私のところへ来た。
どうしたの、と聞くと
「放課後とある男子が奈々ちゃんと話したいんだって」
とクラスメートは一言。
相手の名前は何故か教えてもらえなかった。
「ごめんね!その人から言わないでって言われてて…」
クラスメートの様子からすると相当権力がある人なんだろうか。
名前も名乗らずに人を呼び出すなんてどういうことだ。
仕方ない、その礼儀知らずの顔を見に行ってあげよう。
そう思い、私は放課後、指定された場所でその人を待った。
「………」
私は驚いた。
待ち合わせ場所に現れたのは学年一モテると言っても過言ではない男、逢沢祐だったのだ。
頭はずば抜けて、というわけではないが学年10位以内に入るぐらい良いし、スポーツもそれなりにできるし、委員会とか学級委員とかやってリーダーシップを常に発揮しているような男子。
ちなみに私が逢沢くんと関わったことはこれまで一度もない。
クラスも違うし、接点もない私に彼は一体何のご用なんだろう。
彼は私を見るなり、眉間にしわを寄せた。
そして
「あんた、新堂奈々であってる?」
初対面の私に敬語を使うこともなく、そう言った。
「…そうですけど」
私は低めのトーンで一言返した。
初対面であんたとかどんだけ失礼なの。
早く用済ませて帰りたい。
「で、話って何ですか?」
私は眠そうな彼に尋ねた。
「簡潔に言う」
私は耳を疑った。
「俺と付き合って」