「テメェら、今度から二度と俺のシマ荒らすんじゃねぇぞ」

組長っぽく言ってみたけど……良く考えたら、俺が悪いんじゃないか?

だって、腹減りすぎてもやし盗んだの俺だし、あそこ俺のシマじゃねぇし。

あ~、俺って悪人。

マジ自己嫌悪。

「かっカッコイイ……素敵! 素敵よヒン様。キャハキャハ~☆」

両手を組んでキラキラした瞳で俺を見つめるのは人妻モヤシ。

「そっそうかな。俺ってイケてる?」

照れるじゃぁん?

「イケてるイケてる。イケヒンだわ、キャハ☆」

いっイケヒン……ぜっ是非そこは“ヒン”のある言い方じゃなくて、さ。

「キャハキャハ☆離婚よ!! 離婚だわ~ぁっ。キャハ☆」

「えっえぇっ!? ちょっちょっと待ってくださいよ!?」


俺がヒンがイケてるせいでモヤシ夫婦に破局の危機?

「まっ待て……くれ……」

倒れていたモヤシ男はよろよろと起き上がる。


「嫌~ぁ」

「俺、は……何の……ため……に…………」

マズイ、夫婦ゲンカは食えねぇぞ?。

と思った俺をさしおいて、

「アホアホアッホォン」

バカ犬坂田は喜んで―――――大口開けて走り回っている。

お前は食うんかいぃっ!!


とか言ってねぇで止めなくちゃ!

「火事と喧嘩は江戸の華。痴話ゲンカは犬も食わないと言うけれど、犬の坂田は食うらしい。食うか、食われるか。食われるか食うか! どっちだぁ!!」

と、怒鳴ってはみたものの自分で言ってて意味分かんね~~~!!

ギュル~ゥ

「キャハ☆お腹鳴っちゃった。恥ずかし~。食べます」

タタタタッとモヤシ女はアホ犬に近寄ると、カバもビックリな犬の大口をガツンと閉める。

そしてモヤシ女はビヨン、と自分の顎を延ばす。

っていうか外した。

それだけでも驚くのに、え~~~~ぇ?

モヤシ女は坂田をパクッといったのですが……

「はいイッキ、イッキイッキッイッキ」

先代が手拍子しながら腰を降って応援し始める。

イッキって、無理でしょ。

犬だよ? 犬はカレーと同じで一部人間にとっては飲み物か?

飲み物ってありえないだろ、坂田も暴れるし飲むなんて……っていうか、坂田抵抗しろよ!