どこにもいなかったんだよ。



「……今日──」



顔を見られたくなくて、俯きがちにぽつりぽつりと話し始めた。

クラスメートと喧嘩したこと、俺の過去を勝手に暴露されたこと、そしてそいつを殴ってしまったことを。



美生は黙って聞いてくれた。

何も言わず、ただ静かに。

そんな美生に安心して、思わず涙が出そうになった、なんて、絶対言わないけど。



「……俺の中で過去は何よりも幸せで……何よりも苦しいものなんだ。失って、壊れて、苦しくて……だから、封印しようとしたのに」

「……だから、“死にたい”?」

「……!」



顔を上げるとそこには、笑っているのに泣いているような、そんな表情をした美生がいた。