中から俺の姿が見えないように、ドアの陰に体を隠す。

そんな俺に気付いたのか、美生は入っていいよと、小さく笑った。



──キィ……

音を立てて開いたドアが、やけに重く感じて。

立ち入ることを赦されたことに、少し戸惑っているのかもしれない。



美生の部屋はシンプルというより殺風景で、俺が昔使っていたベッドと、買い物に行ったときに購入した収納ケース、そして小さなテーブルがあるだけだった。



「おかえり、千速くん」

「……あぁ」



部屋の中に入り、ベランダの鍵を閉めた美生は、ドア近くに立ち尽くしたままの俺を見て、また力なく笑った。



「座って?……って、千速くんの家だけど」

「……ん」



ベッドに腰を下ろした美生の隣に、俺も座る。

ギシ、と沈んだマットレスに、俺は目を伏せた。



「……何かあった?」



様子を察してか、美生が心配そうに俺の顔を覗き込む。

その顔色は朝よりもずっとよく、少しだけ安心したんだ。