美術が得意でない俺は、ひたすら、黒に黒を重ねていく。

ぱっと顔を上げると、何の迷いもなく、赤い絵の具で絵を描いていく芹沢が目に飛び込んだ。



……すげ。



「……」

「……」



躊躇いなんてどこにも感じさせない芹沢に、思わず息を呑んだ。



だって絵の具だぞ?

失敗したってやり直しがきかねえんだぞ?



なのに、なんでそんなに。



「せり──」

「──何サボってんの?」



考えるよりも先に声が出ていた。

その先にどんな言葉が続くかなんて自分でもわからなかったけど、誰かの声に遮られたために、言葉の先を知ることは出来なかった。