瞬く間にシャツに水が染み込んでくる。



知らないヤツなら素通りしてた。

──けどそう出来なかったのは、俺の中にもまだ人の心が残っていたからだろうか。



「……さみ」



バケツをひっくり返したような土砂降りの雨の中、目を閉じる。



「……帰るか」



真っ暗な闇の中では、目の前に続く道すら識別することが出来ない。





「おかえ……ってどうしたの!?」



開口一番、俺を迎えた美生は目を見開いてそう言った。

何も言わないで玄関に佇む俺に、美生は風呂場からバスタオルを持って来てくれた。



「傘は……?」

「……貸した」

「……!」