俺の言葉に目を見開いた芹沢は、少しおどおどしながらも首を横に振った。



「わ……悪いよ。持ってこなかった私が悪いんだし」

「……いいから。風邪引かれると、こっちが困る」



きょとんとした後、くすくす笑う芹沢。



「作業、進まなくなるから?」

「……まぁな」

「でもそれ……私も同じだよ。綾瀬君が風邪引いたら困る」

「俺は別に……傘なんてなくても平気だし」



言いつつ、芹沢に傘を押し付ける。



「じゃあな」



それだけを言い残し、雨の中に飛び込んだ。