「やば、私傘持ってないよー」

「馬鹿、天気予報見てこいよ」

「だって時間なかったんだもん」

「ジュース一本で入れてやるよ」

「高いし」



雨に肩を落としながらも、クラスメートはみんな、楽しそう笑っている。

周りを気にする性格じゃないけど、その端で一言も発さない俺は明らかに場違いで、正直今すぐにでも立ち去りたかった。



そんなことを思っている俺への神様からのプレゼントか、



「綾瀬、いるかー」



突然現れた担任が指名したのは他でもない俺で、正当な理由付きで教室から抜け出すことが出来た。





廊下に出た俺は、担任に連れられ、階段の踊り場へと歩いた。

ピタ、と足を止めた担任は、ゆっくり振り向き、俺の目を真っ直ぐに見る。



「進路希望、見たぞ」

「あー……、はい」

「白紙じゃないところは褒めるが……“進学”だけじゃわからないだろう」