「……」

「……」



無言が続き、耐えきれなくなって口を開こうとした刹那、美生がぱっと笑って。



「聞かないよ、私」

「え……?」

「千速くんが昔何をしてたのかとか、あの人とはどんな関係なのかとか──何も聞かない。だってそれがルールでしょ?」



そう言って、美生は笑うんだ。

やっぱり、どこか苦しそうに。



「帰ろうよ、千速くん。今日はカレーにしたんだ」



そう言って振り向いた美生を、夕日が照らす。





太陽の光に目を細めた瞬間、美生の大きな瞳が揺れた気がした。