聞こえなかったふりをするか、いやでも恐らく至近距離で聞かなかったことにするのは難しい──数秒の間に頭の中で色んな案が飛び交い、



「……おう」



結果、ゆっくりと振り向いた。

そこに立っていた人物に、表情が強張るのを感じる。



「……久しぶり」



凡そ2年半ぶりに会ったコイツとは──昔、チームメイトだった。



別にコイツが悪いわけじゃない。

ただコイツと過ごしたあの日々が苦しくて。



「ほんと久しぶりだなぁ!その子、彼女?」

「……違えよ、親戚みたいなもん」

「へぇ。なんだ、彼女出来て楽しい高校生活送ってんのかと思ったよ」



……楽しい、だと?

何言ってんだ、コイツ。

あのことを──あの事件を知ってるくせに。