空に手を翳し、美生は力強い言葉を風に乗せる。

美生は一体、その視線の先に何を見据えてるんだろう。



「幸せに見える人だって、本当は今もずっと苦しんでるかもしれないし、もしかしたらそれを乗り越えた後かもしれない。痛みを知る人はそれを経験してない人より、きっとずっと強いんだと思う」



言葉のひとつひとつが胸にゆっくりと沁みていく。

どん底にいた俺をいつも支えてくれた、温かい言の葉が。



「例え今は弱くても、きっとこれから強くなれる。千速くんは何度だって立ち上がっていけるよ」



真っ黒だった心が浄化されていく、まるでそんな感覚。

悪意に染まった俺の世界に、もう一度手を差し伸べてくれる。