「……」

「でも知っててほしかった。千速くんを大切に想う人は必ずいるってこと」



手が柵から滑り落ち、カシャンと音をたてた。



「でも俺……1人じゃ何にも出来ないようなヤツで、弱くて……」

「弱いことの何がいけないの?」

「……え……?」



茜色の空を見上げて、美生は笑う。

その横顔は今までの美生と何も変わらないのに、どうしてこんなにも切ないんだろう。



「弱さなんて、きっとこの世界の誰もが抱えてる。ただ、それを隠すのが巧いかそうでないかの違いだけ。千速くんは誰よりも自分に素直なだけだよ」

「……っ」

「それに、弱さがなければ強さの存在に気付けない」