「普段は無口で怖かったけど……雨の日に傘を持ってなくて困ってたとき、自分が濡れてまで傘を貸してくれた優しさに惹かれたって言ってた」

「……」

「大切だったから……初めての恋だったから。おばあちゃんはその気持ちを大事に育んで、卒業式の日に想いを伝えるつもりでいたの」



でも、と一旦置かれた間。

そして次に口を開いた美生は、苦しそうに顔を歪ませていた。



「それは叶わなかった」



美生の大きな瞳に滲んだ涙を拭ってやりたくて、でもそれは今置かれている状況に阻まれた。



「おばあちゃんの初恋の人は高校3年生の秋、学校の屋上から飛び降りて──亡くなった」

「……え……」

「そのショックから、おばあちゃんは恋をすることに対してすごく臆病になった。想いを伝えられなかったことを後悔しながら歳を重ねていったおばあちゃんを見兼ねた両親が、お見合いを勧めたんだって」