瞬間、フラッシュバックした過去の記憶。



「あぁ、トイレなら、この渡り廊下の先の右手にありますよ」



相川が質問に答えつつ振り向いたとき、相川の陰に隠れていた声の主の姿を捉えた。

一瞬にして懐かしさや恐怖、憎悪を俺に抱かせた声を、俺は──知っている。



「たく……や……」



3年ぶりに呼んだその名前は、考えるよりも先に声になっていた。



「……え」



記憶の中よりもずっと大人っぽくなったソイツ……拓也もまた、目を見開いて俺を見ている。

戸惑いや怯えを隠せないまま──お前の所為で、俺がもう着ることの出来ないユニフォーム姿で。



「千速……」



この声が俺の声を紡いだのも、3年ぶり。

もう会うことなど、ないと思ってたのに。