「災難だったな、それ。……何で呼ばれたの?」

「なんか……渡し忘れた書類あるとかで」

「そっか、大変だな……」



会話が弾まない。

俺は人との距離感をぎこちなくさせる達人かもしれない、なんて。



「……」

「……」



この空気に耐え兼ねて、口を開こうとした、その瞬間──



「──あの、すみません。トイレ借りたいんですけど、どこにありますか?」



相川の後ろから、男の声が聞こえた。



どくん、と心臓が跳ねたのがわかる。