美生が風呂から出てくる気配はまだない。



「……何の本だ、これ」



目についたのは、机に置かれていたハードカバーの本。

あ、これ……。



「……そこの棚にあったやつか」



幾つかの本が並べられているリビングの棚に目をやる。

本棚は別の部屋にあるけど、特別気に入った本はそこに入れるようにしてる……って、前に美生に話したことがあったな。

好きなの読んでいいって言ったから、これを読み進めてるんだろう。



「どんな話だったっけ」



パラパラとページを捲る──と、どこかのページに挟まれていたらしい何かが、ひらひらと裏向いて床に落ちた。



「やべ……っ」



大分年季が入っていそうな、全体的に茶色くなってしまっているそれを慌てて拾い上げる。

汚れていないかを確認しようと裏を向け──



「……え?」