「……」



美生の生活用品を揃えたときについでに購入した丹塗りの箸で、生姜焼きを一口摘む。

その瞬間口の中に広がった、おばあさん直伝の美生の味。



「……美味えよ……」



美生の手料理が食べられなくなる未来なんていらない。

存在しなくていい。

そう思うのに、さっき何も言えなかった。



「……弱ぇな、やっぱ」



言ったらまた後悔するんじゃねえかとか、道を間違えるんじゃねえかとか。

そんなことばかりを考えて、言いたいことは何ひとつ……。





生姜焼きを食べ終えて、テレビのチャンネルを変えつつソファーに座った。