気まずい、なんて、縁遠い俺達だと思ってた。

普通じゃ考えられないような出会い方をして、くだらないことで笑い合ってきたから。

こんな風になるなら、あんなことしなければよかった。

あんなこと、言わなければ──。



「……はい、生姜焼き」

「……あ。ありがと」

「……うん」



テーブルに並べられた生姜焼きは、今までと変わらずとても美味しそうだった。



「じゃあ私……先にお風呂入らせてもらうね」

「……あぁ」

「……食器は、シンクに置いててね」



俺が頷いたのを見て、美生は扉の向こうに消えていった。



あの夜のことに触れないように、言葉を選んで喋る。

それは美生も同じだということは、今の数分でよく伝わってきた。