少し迷って、家に足を踏み入れる。

自室へ向かう足を止めてリビングの方を見ると、微かにテレビの音が聞こえた。



ここでリビングに寄らずに部屋へ向かうことは、きっと何よりも簡単なこと。

だけど、残された僅かな時間をそうやって浪費しても、何も生まれない。

逃げてばかりいては何も始まらないこと、俺はこの3年間で痛いくらいに学んだ筈なんだ。



──キィ……

震える手で、その扉のノブに手をかけた。

全身が心臓になったんじゃないかってくらいに脈が大きくなって、今すぐにでもこの場から立ち去りたくなったけど、それでも、手を離すことはせずに。

ゆっくりと開けた扉の向こうで──



「……!」



2日前と何も変わらない──いや、少し疲れたような顔をした美生が、ソファーに腰掛けて振り返った。