「……っ!」



ズキン、と胸が痛む。

蘇るのはあの日の記憶。



最近は平気だったのに。

思い出しても、それを抑え込む安心があったのに……。



「……千速?」

「……っ」

「千速?」



嫌だよ。

美生と離れて暮らしていくなんて。

美生の笑顔にもう会えないなんて。

そんなの、絶対嫌なのに──。



「千速!」

「……え?」



はっとして顔を上げると、心配そうな面持ちで桜井が顔を覗き込んでいた。



「顔色悪いけど、大丈夫か?」

「え、あ……あぁ、ごめん、大丈夫」



本当は大丈夫なんかじゃない。

美生の泣き顔を思い出す度に罪悪感と喪失感が押し寄せて、どうにかなってしまいそう。