「何かあるなら、聞くからな!」

「……っ」

「1人で抱え込むなよ、絶対!」



それだけを言い残して、桜井は何でもなかったかのように改札の中へと消えた。



……馬鹿。

この状況で残される俺の身にもなってみろっての。



周りの人からの視線を痛いくらいに感じ、居た堪れなくなってすぐにその場を離れた。



「何もねぇよ……馬鹿」



桜井に相談するようなことは、何もない。

何もないんだ。

これは……俺自身の問題だから。





家に帰ると、美生の姿はリビングになかった。

靴はあったから、恐らく自室にいるんだろう。