「……ピーマン以外ならなんでも」



子供っぽい返答を聞いた桜井が笑うことはなく、ただ小さく頷いて、了解と呟いた。



数歩前を歩いていた桜井が足を止めたのは、この辺りじゃ結構有名な割烹料理屋だった。

高校生が入るような店じゃねえだろ、ここ……!

俺の気持ちとは裏腹に、桜井は何の躊躇いもなく店の扉を開けた。



「ちょ……おい……!」



慌てて桜井のあとを追う。

と、店内に入った桜井は、何やら板前さんと親しげに言葉を交わしていた。



「おっちゃん、これがこの前言うてた友達。ピーマン食われへんねんて」

「おー、この子か!ほんなら、ピーマン以外で美味いもん食わしたろ!」



袖を捲くったその人は、ガハガハと豪快に笑う。