目的地なんてどこにもない、なんて、俺そのものじゃねえか。



「ちょっと待ってよ隆太郎!」

「歩くの遅いとこ、昔から変わってねえなぁ」

「あっ、あんたが速いんでしょ!?」



すれ違う、仲よさげなカップル。



「重くなったなぁ、一輝」

「ベビーカー乗せていいんだよ?」

「んーん、大丈夫。こうやって息子の成長感じられるから嬉しいんだ」

「陸久ったら親バカ……」

「そう言う亜理彩もだろ」



笑顔溢れる家族。



それだけじゃない。

仰ぐ真っ青な空。

気ままに浮かぶ雲。



どれだけ望もうとも、全部──俺の手には入らない。



「……っ」