「あぁ……それはね」



あたかも俺からの質問を予想していたかのような美生は、立ち上がって本棚へと歩み寄った。

そして再び戻ってきた彼女が手にしていたものを見て、懐かしさが込み上げる。



「これ、見ていいって言ってくれたでしょ?……ほら、ここ。偶々見つけたの」



目を伏せて美生が指差したのは、小学校卒業時に貰ったアルバムの寄せ書きページの一角。

そこには、お世辞にも綺麗とは言えない字で、

【千速のたん生日は10月29!おれ、覚えたから!だから千速もおれのたん生日覚えててな!6月4日だから!中学生になってもちゃんとお祝いしような!】

と綴られていた。



「タイムリーだったんだね、私がこれを見せてもらったの」

「……」

「この子とは……中学生になっても、おめでとうって言い合えたの?」