「だって昔から……誕生日を祝ってもらったことなんてなかったから……」



仕事に託けて帰ってこない両親が、俺の誕生日を覚えている筈もなく。

誕生日なんて、あってないようなものだった。



「じゃあ千速くんにとって、人生初めての誕生日パーティーだね!」



嬉しそうにキッチンへと駆けていく美生の背中が愛しくて、ぐっと唇を噛んだ。



「見て、作ってみたの!」



再びキッチンから戻ってきた美生の手には、大きなホールケーキ。

視線をテーブルに移すと、2人では絶対に食べきれないような料理の数々が並んでいる。



「どう?自分では巧く出来たつもりなんだけど」

「すっげぇ美味そう……」

「えへへ。ご飯食べ終わってから食べようね」