爽やかな笑顔を残して、ソイツは軽快に去っていった。

その背中が見えなくなった頃、相川が呆れたように笑って、息を吐く。



「あれ、後輩」

「あー……。野球部……だっけ」

「そうそう。来週の土曜にうちで練習試合するから見に来てくれって、わざわざ言いに来た」



とっくに引退したのになぁ、なんて言いながらも、相川は嬉しそう。

わざわざ言いに来るなんて、よっぽど信頼されてんだなぁ……。



「練習試合の相手、M高校って言うらしいんだけど……綾瀬、知ってる?」

「M高校……?……どこかで聞いたことある気がするけど」



相川の口から伝えられた学校名が俺の記憶を引っ掻くけど、中々思い出せない。

俺の眉根が寄ったのを見てか、相川は慌てたように手を振って。



「無理に思い出さなくていいよ!聞いたことのない学校で、ちょっと気になっただけだから」

「うーん……。まぁ、どこにでもありそうな名前だしなぁ。俺の勘違いかも」

「はは、かもな」