それを横目に見た桜井は、急に声を張り上げた。



「千速にデコピンされたいヤツ、名乗り出るなら今やで!」

「ちょ……何言ってんのお前」

「眠気も吹っ飛ぶし、ええこともあるかなと」

「あるわけあるか!」



あぁ、これじゃまるで──漫才コンビじゃねえか。

そう思うと、今までのやりとりが一気に恥ずかしくなってきた。



「も……もうやめてくれ……。目立ってる」

「今更!クール気取っても無駄やで?」

「……気取ってなんかねえっつの」



踵を返して扉の方へと歩き出す。

俺が教室を出ても、桜井の賑やかな声は教室に響いたままだった。