パーカーを中々受け取らない美生にそれを押し付け、手を引く。



「きゃっ⁉︎」

「靴履いて出てきて。外で待ってる」



返事を待たずに、玄関の棚に置いてあった鍵をとって外に出た。

空を見上げても、空気の不透明なこの場所では、星なんて数えるほどしか見えない。



「……っし」



空に浮かぶ月に意気込んでみる。

何に対してかは、自分でもよくわからないけど。



「お待たせ……って、なんで?」



外に出たきた美生は、俺が跨っている自転車を見るなり目を丸くした。

そうなることは想定内。



「後ろ乗って」