サイドに纏めた髪なんてお構いなしに髪を乱すと、美生は更に頬を膨らませてあからさまに顔を逸らした。



「もういい、千速くんなんて知らないっ」



まるで子供のように拗ねる美生に、自然と表情筋が緩んでしまう。



「……悪かったって。コンビニで何か好きなの買ってやるから」

「そんなのに乗せられないもん」

「……何すれば許してくれんの」



俺の言葉に、美生は目線だけをこちらに向けた。

その目は、何かを怪しんでいるようにも見える。



「やっぱり……何かあったの?」

「なんで」

「今の千速くん、何だか変」



俺の過去を知っているから、いつもと様子が違うことを心配してくれてるんだ。

それが伝わるから、俺は嬉しい。