言ってみても、上戸に陥った桜井の笑いが止まることはない。



「桜井君と綾瀬君!この2人が客引きしたら、大盛況間違いなしね!」

「頼んだよ、2人共!」



待て、俺はまだやるなんて一言も──



「おー。オッケー、任せといて!」

「ちょ、何勝手に言ってんだよ桜井!」

「ええやん、昨日みたいに蒟蒻ぶら下げてるより楽しいと思うで?」

「別に俺は楽しさなんか……」



──本当に?

本当に、いらない?



ふと、美生の顔が思い浮かぶ。

彼女は言ってくれた。

もう苦しまないでって。

俺の過去を知って、それでも尚、真正面からぶつかってきた。

彼女は、俺が前に進むことを望んでる。



「……わかった、やるよ」

「ほんまに⁉︎」

「嘘ついてどうすんだ。……言っとくけど、声掛けとかは全部お前に任せるからな」