「あーやーせーくんっ」



昇降口で靴を履き替えていると、どこかで聞いたことのある声が俺の名前を呼んだ。

振り向くと、満面の笑みを浮かべたクラスメートの女と桜井が立っていて。

瞬間、嫌な予感がする。



「……何」

「綾瀬君、裏方ばっかりでつまらなくない?」

「いや……別に」

「昨日、女子で話してたんだよ。綾瀬君って、実は整った顔してるよねって」

「そ、それはどうも……」



ぎらり、と、女の目が光る。



「客引きの子が、用事で休んじゃってさぁ。綾瀬君、やってみない?」



言葉は疑問系で発せられた筈なのに──なんで2人に両腕を掴まれてんだ⁉︎



「似合うと思うんだよねぇ、吸血鬼!」

「仏頂面の吸血鬼もありやんなー」

「だよねー!」



言いつつ、2人は俺の腕を掴んだまま教室へと歩き出す。



ちょ、ちょ、ちょ……。

は、離せええええええ!