……起きるか。



はぁ、と溜め息を吐きながら、重い体を起こす。

時間が早いからか、リビングからは何の音も聞こえてこなかった。

君の意識は、まだ夢の中なんだろう。



「……他人だって線を引くくせに、ずかずかと俺の中に踏み込んできやがって」



だけど、嫌じゃない。

胸に灯るのは、微かな優しい光。

出会えてよかったという昨日の言葉は、嘘なんかじゃなかった。



「さて、と。朝飯の準備でもすっか」



ぐーっと伸びをしてから、俺は自室を後にした。





もしかしたらというより、そうなるだろうなと思ってた。

だから、右側の髪を少しはねさせた美生の反応を見ても大して驚かず、寧ろ笑いが込み上げてきたくらいで。



「な、なんでまた千速くんが……」

「早くに目覚めただけだって」